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消防署でのレスキュー訓練 [南極]

南極出発まで残り2週間となりました.ホントにあっと言う間ですね.

さて,今回の南極調査の準備では,本当に様々な訓練を積んできました
以前紹介した春山登山訓練に加えて,スノーモービルの整備訓練や通信機器のセットアップ訓練などもありました.
今日は,それらの訓練の中でも結構ハードだった「レスキュー訓練」の話.

「レスキュー訓練」
つまりは南極調査中に発生するかもしれない緊急事態に備えるための訓練です.
具体的には,「救助活動法」と「救急救命法」の両方を身につける必要があります.

今回はその両方の技術を一挙に習得できる場所.そう「消防署」で訓練をしてきました.
訓練場所を提供頂いたのは新潟県村上市にある村上消防署で,計4日の訓練でした.

まずは持って行く医薬品の確認や救命道具の確認.
全ての薬品・器具の使い方をマスターしなくてはなりません.
下はAEDです.これは既に使い方はマスター済み.

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もし現場で骨折などをして大量の出血(内出血を含む)があったとしても,僕らの調査場所は昭和基地からも遠く離れた南極の内陸山地.
医療設備が整った所まで移動するのは簡単ではありません.
直ぐにチャーター機を呼べたとしても最短で数日はかかります.
天候など条件が悪い場合だと,病院にたどり着くのに2週間ぐらいかかるかもしれません.

と言うわけで,非常時に備えて点滴・縫合ぐらいは出来るように訓練をします.
でも注射って難しいですね.

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次に,調査中にクレバス(氷河の割れ目)に落下したことを想定した救助訓練.
氷河の上では何時でも何処でもクレバス落下の危険があります.
もし,メンバーの誰かが落ちてしまったら,助けるのは他のメンバーしかいません.
つまり.自分の安全を確保しながらも仲間を救助できる技術を習得しなくてはなりません.

今回の訓練場所はまさに消防署の訓練施設.「ザ 訓練棟」
プロ(消防士)には慣れた場所かもしれませんが,僕らにとってはかなりの高さです..

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早速,クレバス落下を想定した救助訓練開始です.
これまでに習得したロープワークの技術をフルに使って,救助活動に入ります.
まずは地上にいるメンバーの救助を想定して,降下道具を使って訓練棟から下に降ります.

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地上では,傷病者の頸椎を固定し,救助用のボードに載せた上で救助バッグに入れます.
実際のクレバス内は相当に寒いので,この時には寝袋に入れるなどの工夫が必要ですが,この時はまだ夏の名残で暑い!傷病者役の隊員は暑さでグロッキーでした.

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この後は,重量を軽減する引き上げシステム(三分の一システム)を作り,訓練棟の上まで引き上げました.これは本当にキツイかった!

と言うわけで,レスキューの大変さをしっかり味わった訓練でした.
レスキュー技術は習得しましたが,現地ではこの技術を使わないように安全に行動しなくては.
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フリーズドライ食品の製作 [南極]

今日は少し前の作業を振り返って,フリーズドライ食品の製作についてのご紹介.

これまでも紹介しているように,僕らの南極調査では基本的にフリーズドライ食です.
フリーズドライ食を持ち込む理由は,まず第一に輸送費を減らすことです.
フリーズドライ化することで,大体重量は3分の1になります.

さらに,数年前から開発を進めている極地仕様のフリーズドライ食は,調理済みの食品をそのままフリーズドライにしてしまうというものです.この方法は,調理の手間も無く,ゴミも最小限になり,また美味しいというメリットがあります.

特に今年からは,49〜51次の南極観測隊員でこの極地仕様のフリーズドライ食の開発に携わった阿部幹雄さんが立ち上げた,(株)極食さんに製作を依頼しました.そして,フリーズドライ化の作業自体は長野県安曇野の日本FD社でやってもらいました.

下の写真が安曇野の日本FD社です.アサヒビールのグループ会社なんですね.

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今回は,僕もフリーズドライ化の前の作業,「調理」に立ち会いました.
自分たちで食べるものとは言え,製品の衛生管理は大切ですので,ちゃんと着替えます.

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まずは,とにかく大量の料理を作り続けます.
写真のように僕らも「調理」してますが,味付けは一流シェフですのでとても美味しいです.

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そして出来上がった料理を専用トレイに盛りつけます.
ここで各トレイの重量もしっかり管理します.
そして,このトレイのまま凍結乾燥釜にいれてフリーズドライ化することになります.

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そして,フリーズドライ化が終わって完成した品が,先日もお見せしたこれらの食料です.
形が壊れやすいものは1人用毎に専用トレイに乗せたままにしていますし,そうで無いものは一つの梱包に5人分をまとめて入れて,ゴミを減らすようにしてあります.
あとは現地で,お湯をかけると美味しい食事が食べられるという仕組み.

すごい技術ですね.現地で食べるのが楽しみです!

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昭和基地へのフライト2 [南極]

昭和基地までのヘリフライト紹介の続きです.

まず,前回紹介し忘れた「砕氷船しらせ」.
この写真は2009年度(51次隊)の時のもので,新型しらせ最初の航海でした.
船のまわりは海氷ですが,遠くに海(オープンウォーター)が見えますね.

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かなり大きな氷山.
ヘリがサービスで近寄ってくれました.

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さらに海氷上を飛びます.海氷上には所々「水たまり」が見えますね.
これはパドルと呼ばれるモノで.最初は氷の上につもった雪が融けてできるそうですが,融解が進むと氷自身も融け,さらに進むと海氷下の海水まで通じてしまう「底なしパドル」という怖いものになるそうです.
(僕は海氷上での作業経験がないのであまり勉強してません,すみません)

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さて,昭和基地が見えてきました.
東オングル島という島の北側にあります.建物が点在しているのが分かるでしょうか.
夏場には100人以上の人間がここで作業をしたり,基点にして調査に出かけたりします.
そして夏が終わり,しらせが帰投する時にはわずか30余名が越冬隊として残り,次の夏まで一年間もの長い間基地を守りつつ,冬場の観測を続けています.

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これで昭和基地へのフライトはおしまいです.
次は僕らの南極調査紹介に戻りたいと思います.


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昭和基地へのフライト1 [南極]

いよいよTBSドラマ「南極大陸」が始まりましたね,
これで南極調査への関心が高まることを期待してます.

と言う訳で,今日はドラマに便乗して「昭和基地」の話を少し.と言っても昭和基地の情報は比較的簡単に手に入るので,ここでは昭和基地へのフライトを紹介します..
(ただ,今回の僕らの南極調査では昭和基地へは寄りません.完全別働隊ですので)

通常,砕氷船しらせで「昭和基地」の近くまで来ますと,人員はヘリで直接輸送します.
ヘリコプターなんて滅多に乗れるモノじゃないので貴重な機会です.
この時の輸送ではしらせ搭載の自衛隊ヘリではなく,チャーターの小型ヘリに乗りました.
ヘリが軽いぶん軽快に船上のヘリポートを飛び立ちます.

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これはヘリのコックピット.
このヘリはわずか5人乗りで,僕は助手席?に乗りました.
最高の眺めです!

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氷上に出ました.
下に見える氷の割れ目は,「しらせ」が砕氷して通過したトラックです.
これはトラックはかなり大きくて,Google Earthなどの衛星写真からでも見えます.
ぜひWebで確認してみて下さい.

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そして,氷原を突き進みます.う〜ん爽快!
所々見える高まりは,氷山です.
こういった氷山は大抵氷山の下の部分が海底に座礁してしまっています.

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遂に遠くに南極大陸が見えてきました.
いよいよ昭和基地は目前です.

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と言うわけで続きまた今度.
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航空便輸送物資の梱包2 [南極]

「南極大陸」の番宣では全面的にカットされてしまいましたね.
残念でしたが,ブログでは頑張って南極調査準備を実況していきたいと思います.

さて,今回は梱包した物資の中身を少し紹介します.
まずは食料を梱包したプラスティック製ダンボール(下の写真)

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この中に5人分食料が3日分入っています.
南極調査中は,基本的にまとまった昼食はとりません.
カロリーメイトの様な携帯食を食べるだけです.
携帯食は別の箱に梱包しているので,この箱には朝・夕食とデザートや軽食を入れてます.

以前も紹介しましたが,僕らの基本的な食事はフリーズドライ食です(写真下).
これは,フリーズドライ食会社の「極食」に作成してもらったものを,「日本FD社」でフリーズドライにしています.この作業には僕らも少しですが参加させてもらいました.

フリーズドライ食は,お湯をかけて少し待つだけで食べられる優れものの食品です.
南極のテント生活では,氷から水を作ってお湯を沸かすだけでも大変な作業ですので,調理をせずに美味しいご飯が食べられるというのはとても有り難いことです.

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この他の食料は,飲用・調味料です.
飲料としては粉末のお茶が基本ですが,それだけでは悲しいので暖まるものもあります.
下の写真は,先日帰省した際にご寄贈頂いた信州の特別飲料です.

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食料以外の輸送物資として,個人的な物資も梱包しました.
大量の個人荷物は持って行けませんが,野外活動に不可欠な道具はちゃんと持ってきます.
冬山靴,ハーネス,手袋,ヘルメットなどの登山道具に,衣料品を入れると割り当てのダッフルバッグはほとんど一杯になります.あとは文献,カメラ用品,医療品を纏めたものを1箱持って行きます.

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そして今回梱包した全物資はこんな感じ.
上に紹介したものの他に,国土地理院の隊員が持ち込む機材が結構あります.

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最終的にパレット6個,約1300 kgの梱包が無事に終了しました.
南極出発準備の大きな山を越えた感じです.ほっと一息.

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キムタク来所:TBSドラマ「南極大陸」の番宣 [南極]

今週の日曜日から,TBSのドラマ「南極大陸」がスタートします.
北村泰一先生の『南極越冬隊タロジロの真実』を原案とするそうですが,「南極物語」とは別のオリジナルドラマだそうです.
地質学者が主役という,とても珍しい設定ですので楽しみにしています.

一昨日,このTBSのドラマ「南極大陸」の番宣の一環で,
木村拓哉さん,香川照之さん,そして安住アナが我が研究所に来所されました.

僕らは倉庫で輸送物資の梱包作業中でしたが,遠くから大勢の人々とカメラがやってくるなあと思っていたら,このお三方で,倉庫内を見学されていました.

僕らの作業場にも来られ,なかなか興味深そうにフリーズドライ食料を見ていかれました.
安住アナや香川さんが色々と質問されていったので,少し説明させてもらいました.
もしかしたら,この部分は放送されるかもしれませんね..
南極調査の事がうまく伝わるといいんですが,テレビだし,どうなるでしょう.

木村さんとも少し話をしましたが,食料とは関係ない話でこれは放送されないでしょうね.

今週10月14日(金)夜7:00の「ぴったんこカンカン」という番組だそうです.
お時間ある方は見てみてください.



*僕の研究所は比較的頻繁に取材が来まして,先週も「はなまるマーケット」の取材が入ってましたが,いつも通り平然としていました.でも,さすがに木村拓哉さんや香川照之さんクラスの方が来るとなると,かなり騒然となりました.特に事務系女性陣が大騒ぎ.
まあ,僕らはその後も淡々と作業を続けるだけでしたが..
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航空便輸送物資の梱包 [南極]

昨日からブログ再開したところですが,早速昨日の作業を紹介します.

今週は,南極調査物資輸送のために梱包作業をしています.
僕らは昭和基地に行かない別働隊ですので,物資輸送も全く別ルートとなります.
物資は(僕らも),南アフリカからロシア基地経由で南極のベルギー基地まで輸送して,そこからスノーモービルで運搬するんですが,とりあえず南アフリカのケープタウンの国際的な南極輸送物資ターミナルまで送る必要があります.

まず,8月のとても暑い頃に船便でケープタウンまで送る物資を発送しました.
この時に送った物資は主にキャンプ・調査道具です.
こういった重量物は輸送料金が高いので,頑張って船便にあわせて準備しました.
この時送った物資の重量は1400 kgぐらいです.

一方,今回輸送するのは主に食料です.
食料は,赤道経由でゆっくり運ばれる船便にはちょっと載せられません.
腐っちゃいますからね.
そこで,料金は少々高いですが,航空便で輸送します.
まあ僕らの食料はほとんどフリーズドライですので,実際それほど重くはないです.

さて,下の写真が梱包したプラスティックのダンボールです.
普通のダンボールだと濡れて駄目になってしまうので,特注の「プラダン」を使います.

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今日の作業で,全調査期間中の基本的なレーション(食糧分け)が出来ました.
あとは,明日不足している食料品などを追加して,仕上げです.
順調に進んでます.
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ブログ更新を再開します! [南極]

二ヶ月も更新が滞ってしまいました.
「南極観測隊」の準備状況を実況していくためのブログのつもりでしたが,実際に準備が忙しくなるとブログ更新の時間がなかなか取れませんでした.
ふと気付くと「南極出発」まで残り30日を切ってしまった!!
ここからは何とか気合いを入れて記録を残していきたいと思います.

とりあえず更新が滞っていた間の出来事を纏めておきますと,以下のような感じです.
(プライベートの出来事も混じってますが... これもあってとても忙しかった)

・ ヨーロッパ出張から帰国
・ 南アフリカ経由で南極に送る物資のうち,船便物資の梱包・出荷
・ 長男生まれる.
・ 論文が受理される
・ 学会二つ
・ 消防署でレスキューと救急救命の訓練
・ 地元の中小学校で南極の講演
・ 地元の方々とお会いして,南極行きの品を頂く

とりあえず今日は決意表明です.
これから先は時間を見つけて具体的なことを報告していきたいと思います.
宜しくお願いします.
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夕暮れの大日連峰 [南極]

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先日の春山訓練中のベストショット
夕暮れの大日連峰.
さらに日が沈むと,雪の模様がきれいに浮き上がってきました.

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春山訓練2(立山編) [南極]

最近,色々立て込んでおりましてブログ更新が追いつきません.
先週は第53次南極観測隊がほぼ全員集合した夏訓練に参加してきました.
草津温泉の研修所に4泊5日の缶詰で,南極での研究計画やロジスティックスの打合せと, 野外活動トレーニング?も行ってきました.

訓練では,僕らセールロンダーネ山地調査隊と,もう一つの長期野外観測チームであるラングホブデ氷河隊が,体力系観測班として一つの班にまとめられていました.
と言うわけで,トレーニングでは野外調査隊のメンツをかけて体力(と少々の知力)が充実している事をアッピールしてきました.お陰で,訓練後はしばらく体中が筋肉痛でした.


話は変わって,今日はこの夏訓練の前に行った春山訓練の紹介です.

今回の春山訓練は北アルプスの向こう側(長野出身者の目線).立山で実施しました.
まずは,車で前回の訓練地でもある針ノ木岳の扇沢ターミナルを目指します.
今回は前回と違ってとっても良い天気でした.良かった.

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扇沢ターミナルから黒部アルペンルートを乗り継ぐと,わずか数時間で立山に到着.
早速装備を調えて,今夜の宿である「ロッジ 立山連峰」に向かいます.

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途中,国土地理院の隊員が,同僚の仕事場(測量現場)に遭遇.
こんな残雪期にもこうやって常に国土の測量事業を進めているんですね.感謝.

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今夜の宿,「ロッジ 立山連峰」です.
なんと山小屋なのに源泉直結の温泉付き.そしてビールも格安販売中!
そして,小屋の照明はLED,外には小型水力発電機.
山小屋も随分進化しているんですね,とても快適な小屋でした.

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これが小型水力発電機.
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翌朝は4時起床です.
今日はルートは,まず立山の雄山に向かい,その後立山を縦走,別山を経由して,劔御前小舎に向かいます.そして雷鳥沢を降りてくる計画です.
さらに途中で,滑落停止訓練と,クレバス脱出&レスキュー訓練を挟むハードな内容.
まあ,まずは頂上目指して出発です.

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正直,登りはしんどい且つかなり怖いので,途中の写真はほとんどありません.
でも数少ないショット.標高が上がってきて,室堂全体と遠くに富山湾が見えてきました.

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そして,いきなり立山(雄山)の頂上です.
はしゃぐ最年少の隊員.僕はそんな(精神的)元気はありませんでした.

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そして,立山連峰を縦走して,劔御前小舎から雷鳥沢を降ります.かなりの斜度で怖い.
でも午後の気温上昇で雪が溶けてきていて,滑って下まで落ちることは無いかな..

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下山した後はクレバス脱出とレスキュー訓練を行いました.
まずは3mほどの雪の壁を使って,自分一人で脱出する訓練.

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三分の一(重量軽減のロープワーク)を使った引き上げ訓練.

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そして,最後に搬送用ツエルトを使った傷病者の運搬訓練です.

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今回もハードな訓練でしたが,これで雪上の訓練はおしまい.
次に雪の上に出るのは南極だ!


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