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いまさら調査地の紹介 [南極]

出発直前になって慌てて僕らの南極調査を紹介していますが,
まだ調査地が南極の何処にあるのか,行き先をご説明していませんでした.
と言うわけで,今日はまず僕らの調査地が何処にあるのか?のお話.

早速ですが,下が南極大陸を三次元的に表した図です.
南極氷床の形がわかりやすいように高さは誇張してあります.

南極三次元図.jpg

この図の下,海岸沿いにあるのが「昭和基地」です.
そして,南極氷床のほぼ頂上と言っていい高所にあるのが「ドームふじ基地」です.
標高は約3800 m,富士山より高い所にある基地で「南極料理人」の舞台になりました.

そして,昭和基地の右上,現在は閉鎖中の「あすか基地」の近くにあるのが,
僕らの調査地であるセール・ロンダーネ山地です.
この図では山は見えませんが,ここには南極氷床を突き抜けた山地があり,
夏には雪も溶けて南極大陸では珍しく岩が露出する「露岩域」になっています.
そう,こんな感じの景色です.

SUG_1569.jpg

ついでに下の図は,僕らの調査地を含む東南極ドローニング・モード・ランド(Dronning Maud Land)という地域を結ぶフライト経路をまとめたものです.
これは日本を含む十数カ国で運行する国際的な航空機ネットワークでして,ロシア基地のノボラザレフスカヤ基地を起点として,チャーター機で各地に飛び,調査・観測ができるシステムが作られています.
第一次南極観測隊が南極に向かった頃を考えると,凄い進歩ですね.

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http://www.alci.info/
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内陸山地(調査地)行きのフライト [南極]

先日は昭和基地へのフライトをご紹介しましたが,
今日は僕らの調査地である南極内陸部の山地*へのフライトを紹介します.
*名前はセール・ロンダーネ山地と言います.ノルウェー語なので不思議な響きですね.

まず,以前も紹介したように,南アフリカのケープタウンから南極のロシア基地(ノボレザレフスカヤ)まで,イリューシンという輸送用ジェット機で一気に飛びます.
「一晩飛ぶとソコは南極だった」という感じで,あっと言う間に南極に着きます.

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到着したら,大急ぎで物資を下ろします.
いきなりマイナス20℃以下&風速15 m,寒さに慣れぬ体にはかなり厳しいです.

写真は前回の調査の時なので,スノーモービルも入れて計7トンも物資がありました.
これを次は小さなプロペラ機に乗せて(下),調査地近くのベルギー基地まで飛びます.

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飛行機に物資を載せるとこんな感じです.
荷物の隙間に隊員も便乗していきます.

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もちろん,一回では運べないので,何回も往復します.
そのうちに天候が悪くなり,この時は結局荷物を全部運ぶのに一週間かかりました.
隊員の一部も最後までロシア基地に残ったので,やはり1週間会えませんでした.

フライト中,窓からはまさに「南極の絶景」を見ることが出来ます.
僕もこれまで世界の各地に行かせてもらいましたが(仕事で),他の場所とは比べものにならない圧倒的な景色でした.

やがて遠くに山地が見えてきます.

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眼下にクレバス帯が見えてきました.かなり大規模なヤツです.
上空からだと視認できますが,雪原を移動中だと分かりにくい場合もあって危険です.

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そして,ベルギー基地の滑走路が見えてきました.
滑走路と行っても,雪面をならしてあるだけです.小型機のみが発着可能ですね.
小屋などもなく,ただ燃料のドラム缶が置いてあるだけです.
帰りはパイロットが自分でドラム缶から給油して,帰ります.

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これは,次の飛行機が降りてくる時に撮った着陸(着雪?)の瞬間です.

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着陸後,早速に物資を下ろして,とりあえずベルギー基地まで移動します.
乗るのはスノーモービルに牽かれるソリの上.寒い..

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という訳で,ベルギー基地に到着しました.
船に比べればあっと言う間ですが,それでも遙々来たなあという感じです.

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ベルギー基地ですが.宇宙船のような先進的なデザインですね.
内部は基本的に木材で作られています.その方が丈夫だそうです.
5年ほど前に着工して,未だ内部は建設中のとても新しい基地です.

このベルギー基地は南極初のゼロエミッション基地を目指していて,
夏だけのオープンとは言え,その間は風力と太陽光発電で全ての電力を賄うそうです.

さすがヨーロッパの国の基地は,内装もおしゃれでした.
昭和基地も雰囲気ありますが,ちょっと違いますね.


次は,さらに基地を出発して調査地への移動について紹介したいと思います.







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消防署でのレスキュー訓練 [南極]

南極出発まで残り2週間となりました.ホントにあっと言う間ですね.

さて,今回の南極調査の準備では,本当に様々な訓練を積んできました
以前紹介した春山登山訓練に加えて,スノーモービルの整備訓練や通信機器のセットアップ訓練などもありました.
今日は,それらの訓練の中でも結構ハードだった「レスキュー訓練」の話.

「レスキュー訓練」
つまりは南極調査中に発生するかもしれない緊急事態に備えるための訓練です.
具体的には,「救助活動法」と「救急救命法」の両方を身につける必要があります.

今回はその両方の技術を一挙に習得できる場所.そう「消防署」で訓練をしてきました.
訓練場所を提供頂いたのは新潟県村上市にある村上消防署で,計4日の訓練でした.

まずは持って行く医薬品の確認や救命道具の確認.
全ての薬品・器具の使い方をマスターしなくてはなりません.
下はAEDです.これは既に使い方はマスター済み.

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もし現場で骨折などをして大量の出血(内出血を含む)があったとしても,僕らの調査場所は昭和基地からも遠く離れた南極の内陸山地.
医療設備が整った所まで移動するのは簡単ではありません.
直ぐにチャーター機を呼べたとしても最短で数日はかかります.
天候など条件が悪い場合だと,病院にたどり着くのに2週間ぐらいかかるかもしれません.

と言うわけで,非常時に備えて点滴・縫合ぐらいは出来るように訓練をします.
でも注射って難しいですね.

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次に,調査中にクレバス(氷河の割れ目)に落下したことを想定した救助訓練.
氷河の上では何時でも何処でもクレバス落下の危険があります.
もし,メンバーの誰かが落ちてしまったら,助けるのは他のメンバーしかいません.
つまり.自分の安全を確保しながらも仲間を救助できる技術を習得しなくてはなりません.

今回の訓練場所はまさに消防署の訓練施設.「ザ 訓練棟」
プロ(消防士)には慣れた場所かもしれませんが,僕らにとってはかなりの高さです..

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早速,クレバス落下を想定した救助訓練開始です.
これまでに習得したロープワークの技術をフルに使って,救助活動に入ります.
まずは地上にいるメンバーの救助を想定して,降下道具を使って訓練棟から下に降ります.

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地上では,傷病者の頸椎を固定し,救助用のボードに載せた上で救助バッグに入れます.
実際のクレバス内は相当に寒いので,この時には寝袋に入れるなどの工夫が必要ですが,この時はまだ夏の名残で暑い!傷病者役の隊員は暑さでグロッキーでした.

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この後は,重量を軽減する引き上げシステム(三分の一システム)を作り,訓練棟の上まで引き上げました.これは本当にキツイかった!

と言うわけで,レスキューの大変さをしっかり味わった訓練でした.
レスキュー技術は習得しましたが,現地ではこの技術を使わないように安全に行動しなくては.
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フリーズドライ食品の製作 [南極]

今日は少し前の作業を振り返って,フリーズドライ食品の製作についてのご紹介.

これまでも紹介しているように,僕らの南極調査では基本的にフリーズドライ食です.
フリーズドライ食を持ち込む理由は,まず第一に輸送費を減らすことです.
フリーズドライ化することで,大体重量は3分の1になります.

さらに,数年前から開発を進めている極地仕様のフリーズドライ食は,調理済みの食品をそのままフリーズドライにしてしまうというものです.この方法は,調理の手間も無く,ゴミも最小限になり,また美味しいというメリットがあります.

特に今年からは,49〜51次の南極観測隊員でこの極地仕様のフリーズドライ食の開発に携わった阿部幹雄さんが立ち上げた,(株)極食さんに製作を依頼しました.そして,フリーズドライ化の作業自体は長野県安曇野の日本FD社でやってもらいました.

下の写真が安曇野の日本FD社です.アサヒビールのグループ会社なんですね.

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今回は,僕もフリーズドライ化の前の作業,「調理」に立ち会いました.
自分たちで食べるものとは言え,製品の衛生管理は大切ですので,ちゃんと着替えます.

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まずは,とにかく大量の料理を作り続けます.
写真のように僕らも「調理」してますが,味付けは一流シェフですのでとても美味しいです.

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そして出来上がった料理を専用トレイに盛りつけます.
ここで各トレイの重量もしっかり管理します.
そして,このトレイのまま凍結乾燥釜にいれてフリーズドライ化することになります.

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そして,フリーズドライ化が終わって完成した品が,先日もお見せしたこれらの食料です.
形が壊れやすいものは1人用毎に専用トレイに乗せたままにしていますし,そうで無いものは一つの梱包に5人分をまとめて入れて,ゴミを減らすようにしてあります.
あとは現地で,お湯をかけると美味しい食事が食べられるという仕組み.

すごい技術ですね.現地で食べるのが楽しみです!

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昭和基地へのフライト2 [南極]

昭和基地までのヘリフライト紹介の続きです.

まず,前回紹介し忘れた「砕氷船しらせ」.
この写真は2009年度(51次隊)の時のもので,新型しらせ最初の航海でした.
船のまわりは海氷ですが,遠くに海(オープンウォーター)が見えますね.

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かなり大きな氷山.
ヘリがサービスで近寄ってくれました.

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さらに海氷上を飛びます.海氷上には所々「水たまり」が見えますね.
これはパドルと呼ばれるモノで.最初は氷の上につもった雪が融けてできるそうですが,融解が進むと氷自身も融け,さらに進むと海氷下の海水まで通じてしまう「底なしパドル」という怖いものになるそうです.
(僕は海氷上での作業経験がないのであまり勉強してません,すみません)

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さて,昭和基地が見えてきました.
東オングル島という島の北側にあります.建物が点在しているのが分かるでしょうか.
夏場には100人以上の人間がここで作業をしたり,基点にして調査に出かけたりします.
そして夏が終わり,しらせが帰投する時にはわずか30余名が越冬隊として残り,次の夏まで一年間もの長い間基地を守りつつ,冬場の観測を続けています.

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これで昭和基地へのフライトはおしまいです.
次は僕らの南極調査紹介に戻りたいと思います.


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