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古典 [論文]

先日,一つの論文を読んだ.

それは1979年にGeophysical Research Lettersという学術雑誌に掲載された論文.
この論文の存在は以前から知っていたのだけれども,正直じっくり読んだことはなかった.
そもそも,学生時代はさておき,最近は過去十年より前の論文を読むことはあまり無い.
しかし,査読で「この論文を引用するべし!」とコメントされたので,約30年前に書かれた,ほぼ僕と同い年の論文を改めて読むことにした.

僅か2ページあまりの論文で,図もなく小さな表が一つ.今では考えられないシンプルさ.
でも,内容は驚くほど示唆に富んだものだった.
最近僕が書いた論文で報告した新しい事実に対する予測やそこで用いた手法確立への道筋が,すべてこの論文の中に記してあった.
そして,淡々とした記述の中になんとも言えない迫力があった.

たまたま僕は素晴らしいデータを取得できたけれども,先駆的な研究による知の蓄積や技術的な進歩があって,初めてこの結果に到達できたのだなあ.

このようにその分野の古典ともなるような論文が,何時か僕にも書けるだろうか.

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論文執筆セミナー [論文]

こちらの大学では週に一回,受け入れ教官の受け持つゼミに出席している.
昨日のセミナーでは,今学期最初と言うこともあり,教官自ら学生向けの論文執筆方法について講義をした.

それにしても,その内容が非常に具体的なことに驚いた.
既にある程度論文を書いてきた僕にとっては,それほど役立つ情報は無かったものの,修士や博士課程の学生に対してはとても有用な講義だったと思う.

タイトルには基本的に「地名,手法,年代」を入れることから,
イントロダクションは三つのパラグラフに分け,初めに研究の意義,次にこの研究分野の疑問点,三つ目にこの論文で行った内容をまとめること,
そして,議論の構造から著者順,謝辞まで具体例を紹介しながら細々と..

僕は今まで論文の書き方について講義を受けた経験は無い.
少なくとも同分野ならば他の人も無いと思うから,恐らく日本では一般的な事ではないと思う.
では何時論文執筆方法を身につけるかと言うと,論文を初めて書いた時ではないだろうか.
僕の場合は随分遅く,博士課程に入って随分経った頃,他の同級生が既に論文を書いていることを知って,慌てて修士論文の内容を投稿論文にすることにした.
その時書いた日本語の論文を,当時の助手の先生に手取り足取り見てもらったのが最初の指導だったと思う.その後は,論文を書く度に共著の先生に直してもらうことで論文の書き方を覚えてきたような気がする.特に,世界でもトップクラスの研究者であるポスドク時代の恩師からは,英語の表現方法や論理の展開の癖などを直してもらうなど,大変貴重な指導を受けた.ただ,正直に言って指導教官からみっちり指導してもらうという機会がなかったので,系統だった論文の書き方は教わってきていない.例えば,謝辞に入れるべき項目など最近までよく知らず,後々にあれは拙かったと気づき,大変申し訳なかったと反省したこともある.つまり論文の書き方が分かって来たのは極々最近ということになるが,実はまだ知らないことも沢山あるかも知れない.

このような経験を踏まえると,修士の時代ぐらいにこの論文執筆セミナーを受けていたら随分違って来ただろうなと思う.こちらでは,英語のハンディが無い上に,この様な戦略的講義を受けることによって競争力のある若手研究者がどんどん育っていくのだろう.

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研究と論文と [論文]

一般に言われるように,研究は論文を書いて(一応)完結する.そして,クオリティーの高い論文を沢山書くことは,成果至上主義に問題があるとしても,研究者として評価するべきことであるのは間違いない.

正直言うと,僕自身は論文を書く上でそれほど苦労したことはない,議論構築の上では.ただ,英語力に問題があるのと,集中力が持続しないため,とにかく時間がかかる.それでも最近では早くなってきて,時間が取れれば1ヶ月ほどで初稿をあげられるようになってきた.でもデータ取得に時間がかかるし,怠け者なので論文数は少ないのだけれども.

一方,最近後輩というか上司の部下にあたる若手研究者が論文書きで大変苦労している.なかなか論文がまとまらないらしい.専門がやや離れているため,的確なコメントは出来ないのだけれども,論文と言うより議論が整理されていないように見受けられる.研究者として生きていくためには,そして現時点の雇用を守るためにも,なんとしても論文を書いてもらいたいのだけれども,こればかりは他人が出来ることが限られていて難しい.だが,彼は研究に対するモチベーションが高く,特に非常にポジティブで何にでも興味を持つ姿勢があり,大学と比べフレッシュさに欠ける研究所ではとても貴重な存在だ.研究では,常に細部の問題点を詰める作業を進めているためか,まわりには僕も含めてネガティブ思考の人が多い.この傾向は,学生という好奇心に溢れる人間が常に供給される大学に比べ,人間関係が固定されている研究所で強い気がする.しかし,最近研究を大きく展開・発展させる上で一番大切な要素は,その研究テーマや広く関係する科学を心から(ポジティブに)楽しむことでは無いかと思うようになってきた.そして,主にチームで仕事を進める研究所では,ポジティブで活気のある人材が存在することによってチームが活性化し,結果として他のメンバーの研究の進展にも繋がるはずだ.

と言うわけで,君(後輩)の存在は本当に大切なのですよ.でも論文も頑張って書いてね.

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